撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ピアノより大切なひと(純情きらり)

 達彦がかねに、「好きなことさせてもらったよ。音楽学校に行かせて
もらった。半年だけだけど、ほんとに楽しかった。・・夢のようだった
よ・・」と話す。家に帰ってから、父の死の直前に弾いてから、聴くこと
のなかった、達彦のピアノだった。


 すべてを整えられて、それでもなお、桜子の未来を縛りたくない達彦は、
結婚を承諾しない。かわりに桜子の家に届けられた、お父さんのピアノ。
「どこにいても、君がピアノを弾いている、そう思えることが、僕の支え
です」そう手紙に書いた達彦からのプレゼントだった。


 いつも、ふたりの間にはピアノがある。ピアノを通して、相手を思い
やったり励まし合ったり・・。いつか気づくだろうか?それとも、もう
気づいているのだろうか?大切な人の、大切なピアノだけれど、本当は、
大切な人以上に大切なものなんかないってこと・・・。


 ピアノが、大切な人を偲ぶよすがになどなりませんように・・。
 いつか、ふたりの幸せな未来を奏でてくれますように・・・。

ピアノは知っている―月光の夏

ピアノは知っている―月光の夏