こころが求めるもの(純情きらり)
以前書いた。冬吾と桜子は、芸術家ならではの絆を持っている
ようだが、桜子がそれほど芸術家っぽくないからなんか不自然に
見えるのよね・・・と。
冬吾が目を覚ました。夢で、桜子の弾くピアノの音で引き戻さ
れた・・・と桜子にいう。
桜子はどんな気持ちで冬吾を見つめていたんだろう?寂しい
桜子が、何かを求める気持ちがあまりに痛々しい。
冬吾の夢の話を聞いて、これは、達彦の夢だ・・・と思った。
達彦こそ、桜子のピアノを聴いて、桜子のもとへ帰って来るはず
ではないのか?
笛子やかねが、芸術とは関係のない、生活に根ざしたきちんとした
ひとたちとするならば、冬吾はその対極にいる、自分の中心が芸術の
ひとだ。そして、桜子や達彦は、その中間点・・生活も大切にしながら
芸術を志している。桜子と達彦が揺れ動いていたときに、冬吾が達彦に
アドヴァイスをしたことがあったなあ・・と思い出す。桜子と達彦を
音楽を通してもう一度結びつけるためには、純粋に芸術だけを求める
冬吾でなければ、媒体にはなれないだろう。
冬吾の今日の澄んだ瞳を見ながら、このひとはもしかして、達彦に
桜子のピアノの夢を見せるために、生死の境をさまよいながら、達彦
のところまで行って来たんじゃないか?・・そんなことを考えて
しまった。
笛子は、冬吾を心配する桜子に言う。「あんたにとって冬吾は
お父さんのように大切な人なんだねえ」と。今の桜子は、そんなの
とは違う・・と言うかも知れないが、こころの大事な部分で繋がるもの、
そして、受け入れて見守るもの・・そんな桜子が欲しているものに
名前をつけるとしたら、なんといえばよいのだろう?笛子の想像を
超えたところかもしれないが、その本質を、笛子は以外と見抜いて
いる・・と思う。父の死でうろたえた笛子は親離れの苦しみを経験
したのだろう。姉の経験を自分のものと錯覚している桜子はこれから
本当の自立を経験しなければならないのだろう・・・。