撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

命を刻みつける(純情きらり)

 桜子が輝一に贈るもの・・・。


 有森家のピアノがもう一度開かれる日を望んでいたら、
達彦の手で開かれた。桜子のコンサートが開催されると
きいたときに、桜子作曲、達彦演奏もありだよな・・と思って
いたら、こんなかたちでそういうことが起きた。


 桜子の夢は、そのまま輝一に伝わっていることだろう。その
桜子の想いを乗せた曲が輝一を包んでいる。


 悲しくないと言えば嘘になる。我が子を抱きしめたいことだろう。
それでも・・・可愛そうなんて言いたくない。桜子は幸せだ。自分が
望む道を迷わず歩み、その時出来る最大の努力をして、今日まで
生きて来た。いままで関わってきたひとが、桜子が一途に向き合って
きたひとすべてが、今は桜子を守っていてくれる。家族が、仲間が、
山長の人たちが・・・。


 そして、達彦・・・。桜子の書いたノートをみて、その想いを
理解してくれる人。桜子の作った曲を誰よりもそのままに息子に
伝えてくれるひと・・・。「音楽を忘れるな」と桜子に言った
達彦だった。その想いを絶やさずに守り続けた桜子だった。桜子と
達彦の人生が重なったとき、ふたりの命を継ぐ輝一が生まれた時、
二人の中でずっと鳴り続けていた音楽もまた、輝きを放って生まれて
きた。・・・桜子は幸せだ・・そう書き記したい。