撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

fiction きみのかけら

Amulet

明け方の夢に君が出てきたよ 会いたいなって思いながら忙しいだろうなって我慢してたら 街角のビルのエレベーターの前で待ち合わせしてる夢を見た 仕事が終わって急いで駆け付けたら君はスマホなんか眺めながら その場所で何にも待ってない顔して立っていた …

手離す

天気のいい昼下がり 靴を捨てた もう未練はない 悲しい思い出も一緒に忘れる 雨にけむる街並み 目の前で閉まるドア 無くなった予定 無くした時間 ぜんぶ靴のせいにしてしまって 葬るように白い薄紙に包んで処分する ちいさな靴は萎れた花束のように こときれ…

L'INTERDIT

飴色に潤う柔らかな木肌 上品な曲線を描く肘置き 懐かしくてしかも古びない布の模様 砂時計のように時間が降り注ぐその一角を見つけた時 思わず手を伸ばしそうになった! 赤い斜線の禁止のマーク そうだった、展示品だったのだ なんて的確な場所に置かれた小…

線(line)

いつもの店、いつものカウンターである ちょうど客が引いてすこしだけ落ち着いた店内 マスターはいっとき奥へと消えた カウンターの向こう側とこちら側で大した意味のない視線を交わす そういえば・・ね ん?なに? この間怖い夢をみたんだ ほら、昔「風が吹…

メナジェール

今でいえば0次回とでも言うもの サークルの飲み会が夜あるというので 夕方からそのなかの数名で軽く飲んでいた 飲むといってもコーヒー 飲み会の前でもなんのそのと 若者たちはパスタやサンドイッチを食べている 私はそんなに入らないわといいつつ 選んだも…

桜貝

普段乗らないあたりの路線バスというのは どうしてこうも旅の気分を味あわせてくれるのだろう ほんのきまぐれで始まったふたりの午後は なんだかいつもと全然違う気分で過ぎている 歩くのは好きだ どうということのない話をしながら歩き続ける 職場の後輩が…

プロローグ

思いつくままに書くことにしてみよう ふとしたときに浮かんでくるふとしたこと それはわたしを微笑ませてもくれるし ときには涙ぐませてもくれる 遠く懐かしい思い出でもあるし これから起こる楽しい予感でもある そのちいさな欠片が 何かの拍子でぴったりと…