撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

おめでとうございます(純情きらり)

 達彦に召集令状がきてから、何度も聞く言葉「おめでとうございます」。
この言葉に違和感をおぼえている人も多いはずだ。今日も、笛子が達彦に
言っていた。だからといって、笛子が薄情だったり、単純だったりするわけ
でもないと思う。出征するしかない人に、一体なんと挨拶すればいいのか?


 お国のために出征することが、本当に誇らしく思えた時代があったのか?
生きて帰って来る方が普通だった時期があったのか?一体だれがいい
始めたのか?そういわれなくても、ほんとうに戦地に赴くことができたの
だろうか?この言葉が引き返せない悲しさに満ちて聞こえる。


「めでたくなんかない!人殺しになんて、行きたくない!」と言えなかった
世の中だったということが、なにより恐ろしい。


「命を落とした人のことを考えろ」とか、「みんなやっているのに、お前は
腰抜けか!非国民め!」などと、責め立てられる時代。反抗すれば、特高
やってきて、これまた命を脅かすほどの弾圧を受ける時代。


 なにかおかしい・・と思ったら、小さくても声を上げたい。
 本当に大切なものは何か・・いつも考えていたい。


 こころにもない「おめでとうございます」を言う時代には二度としては
ならない・・・そう思う。