撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

迷い鳥(芋たこなんきん)

 徳永家に迷い鳥がやって来た。飼い主さがしのポスターを
書いているかと思ったら、アッという間に居心地の良さそうな
鳥かごに入れてもらっていたのも笑ってしまった。


 あたらしい相棒が出来た・・と、ちびちゃんの名前をつけた
鳥と一杯やろうか、といっていた健次郎さんの想いも叶わず
冷たくなっていた小鳥・・。相棒がいなくなるさみしさ・・その
不在の残酷さになにかを思う健次郎なのか・・。心揺らす町子を
なだめ、慰める健次郎が、ひとり涙ぐんでいたのがなんとも淋しく
言い難い不安を感じさせた。今日もまだなんだかすぐれずたまに
咳をする大先生が気に掛かる。


 みんなが小鳥の死んだことを可愛そうに・・と話す中、どこか
つっけんどんに「せっかくいい家に迷い込んだのに」と言い放つ
お兄さんの連れてきた女。冷たいような・・または、冷たさに
耐えているような、徳永家に今までいた人々とは違う世界にいる
人のように見えた。それまでの女の様子とは裏腹に・・・。


 迷い鳥は、通り過ぎて行くだけの迷い鳥なのだろうか?それとも
新しい家族になるのだろうか?死んだ小鳥を「可愛がってくれてた
飼い主とはぐれて可愛そうにな・・」という健次郎に「それでも
つめたい道ばたでなくこの場所でよかったですよ・・」と慰める
純子さん。なにかの話の折に「おれは何処で死ぬのだろう?」と
つぶやく昭一。できれば、こころ安らぐ暖かい場所で・・と願う。


 いなくなった女の事情を考えながら、そんなに悪い子にはみえな
かったけれど・・という健次郎と、それはそうやけど、人間には
ほんまにわからへん部分があるから・・とつぶやく町子。


 自分の心の中にひそむ得体の知れないものを怖れる。今までの
自分の暴かれることに、自分が流れていってしまいそうになる弱さに
幸せを守るために、自分の心を縛り、封印しようとする。人の心は
弱いものだ。そのことは否定できない。


 しかしながら、すべてを剥ぎ取り、洗い晒したとしたら、どんな
こころが残るのだろう?自分ですらしらない自分が、人間の中には
まだ隠れていることもあるかもしれない。


 こころ優しい昭一さんが、悲しみに沈まなくて済むことを祈る。
しかしながら、あのおにいさんが、だれかのものになっちゃったら
なんだかおもしろくないのよねえ・・というのもロマンチック昭一
ファンの本音です(笑)