撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

友達として(芋たこなんきん)

 人はどれだけの薄い、淡い想いを心の中に密かにしかし
大切に重ねながら生きていくのだろう・・。言葉にすると
変質してしまいそうに名状しがたく、抱きしめるとこわれて
しまいそうに繊細なもの。


 明るい顔で北野に「おめでとう」を言い、それ以上の話を
北野にさせないほどにはしゃいでみせた純子さんのこころが
冷たすぎて痛いほどにしみわたる澄んだ水のようだった。


 「たこ芳なめたらあかんわ」というおりんさんが、そっと
用意していてくれていたであろうシャンパン。町子と北野
純子と北野、さりげなく、しかし、最大に張りつめたような、
こころを砕いた会話。そんな会話もできて、日々の話もできて
時には仲間とも楽しめる店。おいしいものとと共に・・・。


 ふたりは同じこころを持っていたことをやさしく隠しながら、
シャンパンで乾杯したのだろうか?浮かんでは消える泡をみつめ
ながら・・・。しかし、すぐに甘ったるく変わっていく子供の
炭酸飲料とは違い、シャンパンの泡は、思った以上に長く、変わらずに
浮かび浮かんで、こころに寄り添ってくれる。