撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

信じる(芋たこなんきん)

 まさみさんとお兄さん・・というのは嘘じゃなかったんだね。
お兄さんらしくなかったのは、自分のことしか考えてなかったから。
そんなお兄さんを信用できなかったから・・。


 逃げたんじゃないか・・と考えてしまった昭一に、信じてくれな
かった・・というまさみ。言ってくれなかったから、そう思うしか
ないような状況じゃなかったか!お前だって話してくれなかったと
いうことはおれを信じてなかったんじゃないか?という昭一。


 心をえぐられるようだった。優しい秘密と、残酷な嘘は、どこから
違うのだろうか?一枚一枚、はがしていくように、ありのままの自分を
相手に見せていくということは、甘美なことでもあり、また一方では
苦しく、厳しいことでもあると思う。特に大人にとって・・・。


 町子と健次郎というひとたちが間に入ったというのは、この二人に
とってなんて幸せなことだったのだろう。この二人の気持ちが、昭一の
気持ちがとてもよくわかったから、健次郎達がこんな風にきちんと間に
立ってくれたのだろう。本当のところは、血のつながったひとたちには
ほんとうに幸せになってほしいと思うものだもの・・。
 町子の、健次郎の、そして昭一の、本当の家族のような心遣いと、覚悟
に打たれて、まさみの兄もこころを開く・・・。


 二人の祝言の日に健次郎がつぶやいた言葉は、涙がでた。
「ぼくのふるさとは・・・ここや・・・」
 そのふるさとを明るく照らす町子さんは、そんな言葉を噛みしめる暇も
なく、みんなのなかでやっぱり明るく笑っていたけれど・・。


 急に健次郎が、町子の手を握る。・・・大人のラブシーンだったなあ・・。
とろけそうでした・・・。