撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

灯りをともして(芋たこなんきん)

 昭一と健次郎が、本気でやりあう。どちらの言い分もわかる。こころ
やさしいおにいさんと、なんとかきちんと落ち着いてほしい弟と・・。
あの健次郎さんが、声を荒げているのがなんとも身内・・という感じ。


 突然消えるあかり。停電か?と我に返る二人のもとに、すまして
火をともしたろうそくを持って登場する町子さん。どなりおうても
なんの解決にもならへんでしょう?と、二人を落ち着ける。


 「ロマンチック用」には笑ったな。ろうそくを見つめながら静かな
親密な時間を過ごすなんて素敵です。なかなか家の中ではできるもんじゃ
ないですけど・・。お兄さんの「きみらはおもろい夫婦やな」は、肩に
入っていた力がふっとぬけるような心地よさがあった。そして、健ちゃん
は、ほんまにええ人よめにもろうたな・・というのは心にしみました。


 ながれもん、ほんまは打たれ弱いんです・・と、自分のことをいう
お兄さんって可愛い。健次郎さんのいうように、ある意味ぶつかることを
避けて逃げて逃げて生きてきたのかもしれない。それがいいことなのか
悪いことなのかそれは私には分からないけれど、逃げてきたかわりに
昭一はすれていない・・と思う。心の柔らかい部分に、傷つきやすい
優しく、暖かいものを、きれいなまんまで持っている・・と思う。だから
一緒にいるのはやおいかんと思うけれど、たまに現れては、きらきら光る
ものをみんなに残してくれるんだろうな・・。ちょっと寅さんみたい。


 町子さんが、お兄さんがまさみさんのことを語るのを優しく聞きながらも
ある程度のところで、さあ!お薬飲みましょ!と気持ちを切り替えるのが
おしゃれだな・・と思った。受け容れながらも溺れない。なごませながらも
甘やかさない。絶妙のバランス感覚だと思う。純子さんは一人で生きている
けど町子さんは家族を持ってはいるけれど、深い関係と信頼で結ばれては
いるけれど、どこか人間はだれしも一人なのだと、そのことも矛盾せず、
冷たくならずに知っている・・と思う。


 長いこと探してた気がする・・という昭一さん。理屈ではなく、ただ心に
暖かいものを感じて涙があふれてくる・・。そんな相手に一生のうちに
出逢えるだけでも幸せだ。傷ついてもいい・・と思えるほどに昭一にとって
特別の人だったのだろう。どんなことになるかはわからない。結ばれたと
しても、そのあとどうなるかなどはわからない。それでも、行けるところ
まで歩いてみよう・・と思えること。答えは・・歩いた道のりと、その
心地よさそのものが教えてくれることだろう。