撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

しあわせになろう(純情きらり)

 磯さん、よかったね。そして、磯さんのとった態度も、とても
共感できたし、立派だと思いました。彼女の言った言葉「あんたが
元気で生きてくれてるってだけで、あたしは充分だから・・」
 一番ベーシックな親の気持ちだよな・・・。


 名前を呼ばれてから、杏子と幸の関係が確かなものになりました。
「幸せになろう・・」杏子の言ったこの言葉は今日の、忘れられない
ひとこと。愛する人と交わしたい、そして、自分の胸の中に大切に
持っていたい、生きるための言葉です・・・。


 人の幸せを願うのは、優しい気持ちだが、それを相手に伝える
のは、難しい・・。笛子のまっすぐな気持ちが、痛かった。
 桜子に笛子が尋ねる。達彦さんのことを思い出すか?思い出すと
きついか?と。最後まで自分のことを大切に思ってくれた達彦さん
のことを忘れてはいかんと思う、という桜子に、忘れてもいいんじゃ
ないか?という笛子。


 最初に見たときは、なんというかどきどきだった。私だったら、
忘れなくたって、幸せになっていい・・と言いたいと思った。忘れろ
と言う笛子に、ああ・・きついことをいう・・と思った。


 でも2回目に見たときは、笛子は桜子の幸せを願ってるだけなんだ、
と思った。「忘れても、いいんじゃないか」と彼女は言ったんだ。
何故なら、桜子が達彦を悲壮な覚悟で、「忘れちゃいけないと思う」
と言っていたから。桜子の幸せのためには忘れた方がいいと思って・・。
 笛子が考えるような単純な問題ではないのに・・・。取り除いたら
痛みがなくなるようなそんな簡単なことではないのに・・・。


 桜子のホントの気持ちはどうなのか?忘れちゃいけない・・なんて
気持ちじゃないはずだ。ほんとに愛しいひとは、忘れようと思ったって
忘れられないはずだ。桜子自身、達彦が胸の中でどんなに大きな存在
だったのか、本当には、気づいていないんじゃないのかな?
 桜子はいま、悲しいことばかり考えている。彼女が今までやってきた
ことを忘れている。達彦がいなくなって、達彦から手紙で別れを言い
渡されたような気持ちだけが、彼女の心の中を占めている。
 それまでの年月があったはずなのに・・。幸せな思い出とかけがえの
ない日々が・・。達彦にもらった愛と彼女が生きてきた証も・・。
 それは、愛する人がいなくなったって、消えやしない。心の中から
誰かを消そうとすることなんて、自分の思い通りになんていかない。
理屈じゃなくって大切なものは大切なものだ。そんな心の自然な動きが
あるからこそ、いま、桜子は冬吾に頼っているんじゃないのか?


 子供達に音楽を教えたいという桜子。生きていることの素晴らしさと
ともに・・。子供達と向き合うなかで、自分が生きてきた道を思い出す
だろうか?誰よりも、希望を捨てずに、へこたれずに、ぐんぐん前に
進んでいた、自分のことを思い出してくれるだろうか?