撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

言うな(さくら)

 ハワイに帰ってしまったさくら。さくらを追って東京まで
来たものの一足違いで逢えなかった桂木。残念がるさくらの
祖母。桂木を見据えるさくらの祖父。


 逢えなかったということは逢うな・・と言うことなんでしょう
と、自分を納得させるようにつぶやく桂木。そしてここに来た
ことはさくらには伝えないで下さいと言い残して帰る。


 どうしよう・・本当に伝えなくていいんでしょうか?と悩む
祖母に「言うんじゃない。言うな」とだけいう祖父。


 逢えなかったことにも意味がある・・それは確かにそう思う。
しかしながら、ただ、逢うな、という意味なのか?


 その意味は、そのことにぶち当たった桂木が自分のこころに
向き合ってほんとうに感じ、決めることだ。


 沢田先生にどうするつもり?と聞かれわかりませんと答えた
桂木はほんとうにわからなかったのだと思う。考えていたのだと
思う。逢うな・・という意味なのか・・そんなに簡単に逢える
ものではない、おまえは本当はどうしたいのか分かっているのか
ともういちど問いかけられたのか・・・。


 さくらのハワイのグランマのもとへ行った理事長。その理事長を
「融通無碍」と言い表す校長。自分の心のままに・・しかも自分の
こころそのものにすら縛られずに自由にこころを飛び立たせる・・。


 桂木はいったいどう感じ、考え、決心し、行動するのか・・。
どんなにこころを砕いても、どんなに言葉を尽くしても、それでも
なお、どう行動しさくらの前にどんなかたちであらわれるのか・・
ここまで離れてしまったら、それを見なければ本当のこころは
伝えられない。東京まで来たその心を残念ながらさくらが見ること
は出来なかった。さくらに見せなければ、意味はない。ひとを愛する
とき・・どうしても目の前にいなければ伝えられないものという
ものは確かにあるのだと思う。