撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

こころとこころをつなぐ(芋たこなんきん)

 健次郎さんが医院を続けることが難しい・・・。健次郎の気持ちを
思うと、町子さんもまた・・・。「よういわん・・」と沈む町子に
純子さんが言う。「健次郎さんのことですもの、きっともうお医者さまと
話してありますよ」じゃあなんでひとことも私にいわへんの?との
問いに「町子先生を悲しませたくないんですよ、大先生は・・」


 人を思いやるとき、直接話せればいいけれど、思えば思うほど
しゃべれなくなることもある。本当のことを話した方がいいのか
それでも、すべてを分かってもらえるかどうか、かえって相手に
気をつかわせたり、誤解をまねいたりするくらいならひとり抱えて
いたほうがいいのか、それともこんなにひとり悩むくらいなら全部
ぶちまけたほうがいいのか、考えれば考えるほどどれがいいのか
自分の気持ちも相手の気持ちも、すべて自信がなくなってしまうことが
ある。


 ましてや、健次郎と町子のように分かり合って話し合っている
ふたりだったら、相手の心の痛みが分かるだけに苦しくて苦しくて
しようがないだろう。わかるからこそ、言葉に出来ないときもある。


 純子さんが、こころを汲んでくれる。緊張のあまり固くこわばりそうな
こころをやさしくほどいてくれる。だれよりも二人をみていてくれた
大切なひとが、大丈夫、大丈夫・・・と、こころをやさしく撫でてくれる。


 人と人の関係は、そのひとたちにしか分からないから、他人が口出し
できるものではないけれど、本人が本当はどうしたいのか実のところは
わかっていて、人に何かを言われたからといってそれが変わることは
滅多にないのだけれど、それでも、もし何かのご縁でひととひとの
間にはいることがあったら、そしてそのこころが分かっていたのなら
純子さんのように、やさしく明るい瞳できちんと声をかけてあげられる
ひとになりたいと思う。できるだけ、やさしい架け橋になりたいと思う。


 徳永医院を閉める覚悟をした健次郎を見つめる晴子を見ていて
本当に、口に出せない想いってあるんだな・・と感じさせられた。