撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

私が死んだあと(純情きらり)

 自分が死んだ後のことをあんなに考えられるだろうか?
そんなことかんがえんで下さい!という桜子に、「今かんがえんで
いつ考えるの?」というかね。残していくひとのために。自分が
大切にしてきたもののために。死ぬということは、自分の人生を
きちんとしたかたちで終わらせることなんだ。死んでもおわらない
ものたちのために・・・。それほどに、かねが生きてきた人生は
自分だけのためのものではなかったんだ。


 最期を桜子と迎えるかね。何て静かで穏やかなふたり。それまでに
覚悟をして準備をしたかねは、桜子と達彦の話をする。ふたりの前に
あらわれた達彦は何を伝えようとしたのか?いや、ふたりが心を
通わせた証としての、ふたりの愛する達彦・・だったと思うのだが・・。


 桜子の気持ちを確かめた上で、店を桜子に任せることをきめるかね。
それでも、最期のときには、桜子に、大きく羽根を伸ばして自由で
いなさいと告げる。そんなあなたが達彦は好きだったのよ、と。
 仙吉さんに預けたものは、いったい何だったのか、いつ開けられる
のか?
 かねの女将としての振るまい、ひととしての自分のけじめの付け方
人への心配りなどなど、魅了されっぱなしだ。そして、それを最終的
にはただひとりで、決心して、手配する・・。達彦に「母は意外と
頼りない・・」と言われていたかねとはまた別の顔だ。最期は、女将
として、桜子を思う母として逝ったかねだった。達彦がいたら・・・
また少し違う面も見せられただろうけど・・。かねの最期があまりに
立派で美しかったのが、どこか寂しくて、そこにいない達彦のことを
いつまでもいつまでも想ってしまう・・。