撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

あんたには待ってる人がおるんだから(純情きらり)

 「これは勇ちゃんの千人針だから」と、忙しい中、勇太郎の愛読書
を紙に書き写す桜子。
 男子たるもの・・と説教しようとして、勇太郎からもっともな答えが
かえってきて、自分の本当の気持ちをにじませるおじいちゃん。
 あまりの勇太郎の決意に、あなたからも何かいってやってくださいと
冬吾の言葉を求める笛子。
 やりたい研究のためには長生きしたほうがいいんじゃないか・・と
いつもののんびり、でも、深い冬吾さん。


 達彦のセーターをほどいてかねさんが編んでいたのは、勇太郎の腹巻き
でした。達彦を送り出したときのことを思い出して・・・。「これが最後
じゃないよね」と言ったときには思いもかけていなかっただろう。戦争が
こんなに大変な状況になることも、ましてや、自分にこんなことが起こる
なんて・・。「必ず生きて帰ってらっしゃい。あんたには、待ってる人が
おるんだから」そう、勇太郎に言葉をかけるかねのいろんな心が見えた。


 達彦への思い。達彦が帰ってくるまで待つことができるかわからない
自分のこと。桜子のこと。
 達彦が桜子と婚約したとき、「このひとたちと家族になりたいと思った」
といったのを思い出した。かねもまた、桜子を我が娘と思うのと同時に、
桜子の家族を思う気持ちを、一緒に大切にしてくれている。自分が桜子を
ずっと見守ってやれないはがゆさのかわりに、桜子の家族がどうぞ、欠ける
ことなく、幸せに桜子を見守ってくれますように・・と。


 桜子のつくった鹿子寄せを食べながら、達彦さんが帰ってきたら、みんなで
食べましょうという桜子に、ただ純粋に、「そうだねえ」とうれしそうな、
懐かしそうな顔をしたかねがたまらなかった。