撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

達彦さんがいます!(純情きらり)

 統制価格によって、八丁味噌をつくることが出来なくなってしまう
山長。キヨシが手を出した大豆は脱脂大豆だったし、そのキヨシも
まもなく入営。かねは、女将として、水をまぜた味噌を売るしかない
と、みんなの前で話す。それではやめるという仙吉。かね自身も、
そんな味噌を売りたくはない・・仙吉にも、仕方がないね・・と
引き留めることすらできない。


 気落ちしたかね。もうすることもないんだから、あんたも帰って
いいよ、と桜子にいう。おかみさんのそばにいます、と桜子。どう
しようもない店の状態、心細い気持ちを隠すことも出来ず漏らす
かねに、「達彦さんがいます。達彦さんが帰ってくるまで、がんば
らんと。おかみさんがこの店の要ですよ」と励ます桜子。


 そう、達彦がいる!それは、静かに燃え続ける希望と未来。


 桜子の、ここ何日かの成長ぶりに驚いている。昔から、誰かのために
唐突なほどに何かをする、口を出す・・という純粋な気持ちは持って
いたけど。あんたに言われたくないよ!とか、ホントにわかって
いってんのか?とか、それはないだろ桜子よ・・てなことがいっぱい
あって、突っ込みどころ満載の純きらでしたものね。


 やっぱり、山長での修行が効いた?


 かねさんの、魅力が本当に印象的な山長でしたものね。いままでの
意地悪で気の強いおんな、はかねさんのほんの一部で、女将としての
器量とか、責任とか、悩みとか、そんなものをいっぱい抱えて気丈に
生きているかねさんが見えました。そんなかねを、桜子も側で見て
きたんだものね。


 あの桜子も、いくつかの失敗を乗り越えて、自分の立場やら、
しゃべっていいこと、いけない時、ここは嫌でも言わないといけない
とき・・なんてわかってきたのかもね。帳簿の件もとても大切な経験
ではあったのだろうね。同時にあの件は、人の上に立つ人と、一生
そんなことに縁のない人・・というものを際だたせてくれたような
気がする。


 最後の場面は、脱脂大豆を使って、とりあえず生き残るための味噌
をつくるところでした。あるもので、工夫してしのいでいく。妥協は
したくないだろうけれど、それは、一番大切なものを守るためのひとつの
やり方だよね。でも、新聞広告に、その旨載せるって、すごいよな。
老舗だよな、潔いよな!今日一番感心したところです。こんなに自分とこ
の商品にプライド(本当のね)持ってる店なら、配給用の味噌だって、
手は抜かないって気がするよね!材料は同じでも、作り手で味が変わるもの!


 達彦さんがいる!と桜子やかねが心の支えにしたように、戦地にいる
家族を思い、どれだけの人々がこの苦しい時代を耐えてきたのだろう・・。
 そしてまた、兵隊さんたちも、残してきた家族のことを思い自分の
命もかえりみず尽くしてきたのだろう・・・。
 戦局も、悪化してきたころには、心の支えもかえって人質をとられて
いるように身動きできなくなってきたことはないだろうか?兵隊さん
を思って、ひどい生活に耐え、家族を思って後戻りの出来ない戦地に
行かされ・・・。達彦の入営の挨拶「勝たずば帰らぬ覚悟」というのを
思い出してしまう。勝てなくったって、帰ってこなくちゃ!人の命を
奪う戦争なんてものの方が間違っているのだから!


 桜子が、「それでも味噌は味噌」と言った言葉が、ある意味、生きていく
真実の言葉に聞こえたな。店がつぶれたら元も子もない、本物の八丁味噌
はいったい誰が創るの!人と心があれば、味噌はいつかかならずつくれる。
 まずは、生きていなくっちゃ!!!


 煮詰まりそうになったとき、すべてをひっくり返して投げ出してしまう
前に、本当に大事なことはなんだったのか、他は譲っても取り上げられても
これだけは手放せないと思う、大切なことはいったい何なのか、この言葉
を思い出して、もう一度ゆっくり考えてみようと思う。


 不謹慎かもしれないけど、面白いじゃないですか!って言った桜子に
こいつとは話が合うかも知れないな・・と初めて思ったわたし・・・。
・・桜子ちゃん、だいぶ自分の言動を客観的にみられるようになったね!