撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

その15 残るもの

 いつか終わりがくるのだろうか。最初からそれを怖れている。最初
からではない。この恋がいままでの恋と違うと感じてからだ。


 恋なんて同じだと思っていた。男の人なんて同じだと思っていた。
もう、いくつかの出会いと別れを経験して、全てを知ったような顔を
して生きていた。


 何が違うのだろうか?


 あのひとの夢が好きだ。あのひとの語る話が好きだ。しかし、その
世界にわたしはいない。私の生きている世界も好きだ。わたしのつくり
あげているものも愛しい。しかし、それはあのひととは関係のないものだ。


 なんど逢瀬を重ねても、ひとつに溶け合ったと感じて涙を流しても
ふたりの未来にふたりで寄り添う姿が映らないことがたまらなく悲し
かった。この時間になんの意味があるのか、本当は別の人と過ごす
時間をいたずらに過ごしているのではないのかと。


 それでもいい・・とわたしのこころとからだがささやいている。
だれにも明日のことなんてわからない。ましてや遠い未来のことなど。
ふたりの道筋がこのまま時折交差するのか、交わるのか、いつか
めいめいの方角を向かうのか・・そんなこと誰にもわかりはしない。
 未来に残すものなど今はいらない。恋の形見のように、残骸だけが
残り、この気持ちが失われるくらいなら・・・。


 ただ、わたしを見つめるあのひとの瞳にわたしが映っていること、今は
それだけでいい。それが、今を生きるちからになるのなら。わたしが
そう思っているように、あの人もそう思っていると信じられる間は
あのひとの腕の中で漂っていよう・・・。