撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

達彦さんは帰ってきます(純情きらり)

 あんたの家とはちがうのよ・・と自分とたねのことを語る
かね。はじめて、笛子の言った「もし万が一のことがあっても、
あんたにはあたしたち家族がおるから」と言う言葉のありがたさが
わかる。かねは、達彦がいないとひとりぼっちなんだ。たね夫婦の
見せかけの優しさにだまされてやることも、意地っ張りのかねの
精一杯の愛情なんだ。ぶつかって新しい関係を築くことはおろか、
本当のことを確かめることさえ、生きていく力が弱くなっている
かねにとってはもうしんどいことなんだ。老い先短い・・なんて、
自分の体にもなにかの心配かあきらめを抱えているのだろうか?


 達彦がいなくなったら自分が跡取りだという太郎。達彦さんは
帰ってきますという桜子。


 かねは、桜子のことを愛しいと思っている。それでも、達彦が
いなければ、桜子を縛り付けることもできないし、余計な苦労は
させたくない、と思うほどに愛しくなっている。肩を揉んでもらい
ながら、どんなことを考えていたのだろう?大きな声で泣き崩れたい
気持を押さえて、平静を必死で保っているように見えた。なにも
言わずに、抱きしめてあげたいと思った。