シャンパンのように
昼間見ていたテレビでワインの話があっていた。なかでも面白かった
のは、発泡性ワインの話。
普通のワインが樽で熟成させるのに対して、発泡性ワインは瓶に
ワインを詰めた状態で熟成させるとのこと。そうすると不純物が澱に
なってたまるので、瓶をさかさまにして、定期的に回してその澱が
瓶の口の方へ降りてくるように働きかける。で、きれいになったころに
澱の溜まっている瓶の口付近を低温にする機械につけ、その部分を凍ら
せてから瓶の口をあけると、その発酵の勢いで、ポンっと凍って塊にな
った澱が外へと押し出される。それから、減った分のワインを補充して
封をして出来上がり・・という寸法らしい。
シャンパンには時が詰め込まれている
シャンパンを開けるとその閉じ込められていた時が動き始め流れ出す
ように泡がたちのぼり花開く
不純物がないと発酵はしない、あの泡もできない
しかしながら不純物は要らない
だからこそ、その一連の作業を経て、透明なワインときめ細やかな泡が
できあがる
なんという手間をかけるのだろう、なんて大切に育てるのだろう。
仕事とはいえ、こんなにものに愛情を込め、時間をかけ・・・。それ
ならば、自分という大切なものにはもっと自分で愛情を注いでやって
いいのではないか。どんなにつらいことも、困難なことも、瓶の中の
澱を沈めるほどに、かすかに胸震わせ、それでもじっと耐え、そして
時折、うまく吐き出し、また新しいもので満たし・・・。
まあ・・いい。極上のワインもいいが、葡萄そのものもまた素晴らし
いのだから。すべてシャンパンのようにはいくまい。それでも・・・
日常に取り紛れそうになりながらも、けっしてうずもれさせたくない
ものもあるにはある。そんなものはひそかに瓶に詰めて心の片隅に
大切に寝かせておくことにしよう。いつかグラスで花咲く日がくること
を夢見ながら・・・。