撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

腹立つんや(ちりとてちん)

 「好きやから一緒にいたい。それだけや」
 シンプルにしてストレートな草々のA子への意思表示。
それが、何より大切な何をも越える言葉になるか、それ
でもどうしようもない美しい言葉になるか。まっすぐな
自分の想いをそのままの自分とともに投げ出されるのは
この上もない嬉しさではあるけれど、どうやっても動か
せない切ない存在になることもままある。相手を思うと
いうことはどういうことなのだろう。人を大事に思うと
いうことは相手をどうすることなのだろう。


 草原にいさんの言葉が重い。しかしながら、いまの
喜代美にとってはそれ言葉よりも、草々と清海のやりとり
を聞いてのほうが自分の心が動く。壁越しに聞いたふたりの
やりとりのあと、ひとり涙を流す喜代美がたまらなかった。
 分かっている・・清海に言った言葉の裏にある自分の
気持ちも、ふたりのやりとりを聞いている自分の気持ちの
裏側も・・。見たくないふたりの恋を見せられ、見たくない
自分の気持ちの弱さと汚さを突きつけられる。


 今日の糸子さんのひとことはなんとも・・。こういう
ところが良くも悪くも糸子さんなのだろうな。小次郎も
また小次郎。みんな完璧な人などいないし、いい人なんだ
けど・・で済まされない部分や、そういうところに悩ませ
られてきた人だって必ずいるんだろう。それでも全部抱え
ながら何とかやってきている。


 何より自分自身のなかにも、そんな・・好きな自分と
許せないほど嫌な自分を抱えながら・・腹の立つことも
自分のものとして大事に抱えながら生きていくのだ。