撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

忘れたらあかんで・・・はい(ちりとてちん)

 清海が東京行きを決心する。買い物袋を下げながら「今から
買い物」という喜代美は草々からそれを聞き急いで追いかける。
 ふたりの会話を聞きながら考える。清海の「負けたくない」
という言葉を聞きながら考える。喜代美の「ありがとう」を
聞きながら考える。


 狭い世界では、目の前のことがすべて。広い世界にでていく
ためには、自分のやり方を見つけにいくためには、どうしても
目の前にあるものを乗り越えなければ始まらない。本当は人と
自分を比べたりする必要はないのだ。大切なものは比べたり
なんか決してできないのだ。どんな場所ででも、どんな世界で
でも、懸命に自分のやるべきことをしているひとは美しいし
尊敬したくなる。「負けたくない」のは、そんな姿勢に・・。
自分も果たして自分のやるべきこと、やりたいことを本当に
心から懸命にやっているだろうか?・・と考えるそのことが
何より大切なのだろう。ひとを無視してはいけないのは、勝ち
負けのためではなく、ひとりよがりに陥ってはいけないため・・。


 A子がA子らしいところ・・可愛くて賢くてみんなの人気者
だったところ・・。そして人気者である上に、B子をすっと
抱きしめちゃうところなんかが、一番彼女らしいのかも・・
などと思う。草々が自分の未熟さを言ってた時に、「でも
私は草々さんの落語好きです」なんて、さらりと言っちゃう
ように・・。もちろん、誰にでもそんなことをいうわけでは
ないけれど、A子はここは・・っていうところで、自然にそう
いう気遣いが心憎いほどに出来る子だと思う。ある部分では
呆れちゃうほど鈍いくせに、そういうところはとても繊細に
気付く。そんな風に、ひとを誉めたり慰めたり・・って出来そう
でなかなか上手くはできない。自分なんかに言われても・・
なんて考える子にはできないし、自分のことだけでいっぱい
いっぱいの子にも無理だし、自分と比べて素直に言えない子
にもできない。
 彼女は・・清海は、恵まれていたから人気者だったのだろう
けれど、恵まれていたからこそできることを、周りのみんなに
惜しげもなく振りまき、与えていたからこそ人気者だったの
だろうと思う。そうすることによって、ますます輝いていたの
だと思う。そんな清海が、東京に行ってどう変わるのか・・
何となく気になるナレーションでしたね・・。


 「落語の腹」が分かるか?と問われる四草。落語いうのは
ひとからひとへ伝わってきたもの、伝えていかなあかんもん
おまえもその流れのなかにおるんやで・・と。
 泣きよる・・うなだれとる・・と言われる四草だったが、
ひとは成長するためには時折涙を流さなければならないのか
とも思う。素直に泣くことを許される、大きな存在がいて
くれるということはありがたいことだ。昨日の喜代美にして
も然り。親以外に、そんな、本当に自分のために叱ってくれる
大きな大人の存在があるということは大切なことなのだろう
と思う。


 小次郎さん・・いままで定期便たんびに奈津子さんのとこへ
やってきてたわけね。お宝、お宝・・といいつつ・・ほんとの
宝物は・・・(ハートマーク)・・・でしょ?(笑)
 奈津子さんのほどける笑顔も可愛かったよ。


 草々さんは悪いひとではない。かえっていい人だと思う。
しかしながら、いいひとはそのまま、自分の中にたったひとり
だけしか人間を住まわせていない。それ以上は持ちきれなく
なって、かえって残酷なことをしたりする。
 喜代美が必死に耐えてついた嘘などに気付きはしない。
頭にポンと手をのせられて、ぴくんと動いた瞳と心にさえ
気付きはしなかった。
 でも・・それはそれでもいいのだろう。喜代美が草々の「頑張
れよ」に答えた「はい」という一言に、彼女はどれだけの
想いを抑え、隠し、そして込めたか・・。涙を飲み込んだ代わり
に、彼女はもう昨日までの彼女とは別人になるほどに成長した
ように見えた。それは、大人への階段・・どころか、崖をひとつ
乗り越えたほどのものだったと思う。涙を流さなければいけない
時・・涙を飲み込まなければならない時・・そんないろいろな
時にめぐり会いながら、ひとは様々なものを内側に抱えつつも
心を澄ましていけるようになるのだろう・・・。


 なんかめちゃくちゃいっぱい考えさせられる一日でした。
昨日の草原にいさんも素敵だった。小草若ちゃんの法則もいい
なあ・・こんな言ってもらえたら羨ましいよなあ・・という
ほどだったし(笑)。小次郎おじさんが正平に言葉を掛ける
シーンもよかった。あんなおじさん・・ではあるけれど、正平
がやっぱりとっても嬉しそうな可愛い子供の顔になっているのを
みて、こんな存在も確かに必要なんだ・・と思えたりしました。
だからあんな小次郎さんでも可愛くて許せたりするのよねえ(笑)。


 どんなことが起ころうとも、どんなことをしようとしても
避けられないのは、そして一番大事なのはひととひととがどういう
やりとりをしていくか・・どんな関係を紡いでいけるかという
こと。自分は何のためにここにいるのか・・という意味は二通り
あると思う。清海に抱きしめられた喜代美が「ありがとう」と
清海に言えたことは大きいと思う。


おまけ

 菊江さんが徒然亭の弟子たちの落語をきくときの顔が何とも
言えずいいなあ。「小草若ちゃん!(怒)」と頭はたいたり
一緒に心で泣いたり、はらはらしながら高座を見守ったり、
時には草若師匠の相談役になったり・・・こんな風にさりげなく
育っていくひと、育てていくひとの傍らにいられたら・・と
菊江さんのような存在に憧れます。