撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

お母ちゃんのせいや(ちりとてちん)

 喜代美の初高座、尻切れトンボで終わってしまったこの
行き所のないこころ・・、。


 自分でも理不尽なことを言っているのは承知の上で
「お母ちゃんのせいや!」と母にあたる喜代美。それでも
我が子の胸の内を思い、ただ一緒に困った顔をしながら
次があるから・・と娘を抱きしめる母。まるで・・疲れて
機嫌が悪くなった子供が、怒って泣いて・・そして安心して
眠るような・・そんななんとも言えない顔をしながらじっと
かあちゃんに背中をぽんぽんとされている喜代美。


 大人になっても、いつまでも小さな子供のように、ときおり
何をしても何があっても赦し受け容れてくれる存在が欲しく
なるときがある。喜代美を見ながら・・そうだ、わたしは泣き
たかったんだ・・と緊張が解けるようだった。


 のぞきにきて、なんともいえない顔をしていた草若師匠。
その顔は、なぐさめようかと思った気持ちが宙に浮いてしまった
ようでもあったし、安心しきった喜代美の顔が羨ましいようにも
見えた。抱きしめたり、抱きしめられたり・・そんなことが
たまらなく懐かしく恋しく思える時が時折ある・・・。