撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

満月を見上げて

 長男の友達が夕方遊びに来た。帰りの時間に最寄りJR駅まで車で送る。
次男も一緒に乗り込み、みんなで家族の話やら、学校の話やらをしながら
友達が来るといつもより優しい長男と、可愛がってくれる年上の友達に
次男は嬉しそう。友達を見送って、帰りにちょっとした買い物をしてから
家路につく。


 両側に男の子を従えて、なんだかこの3人で歩くのも久しぶり・・
なんて考える。ましてや、こんなに落ち着いて、3人ともご機嫌という
のは、もうめずらしいといってもいいくらい(笑)。


 ふと見上げると、空にはいつになく大きく輝く満月が見えた。
「あっ・・満月・・」と思わずつぶやくと、子供達も見上げる。
少し右に傾けてみるとうさぎの餅つきが見えるという次男、携帯で音楽を
鳴らし、この曲の最後の方の歌詞、いかにも満月にぴったりっちゃん!と
聴かせてくれる長男。


 この夏は二人目のおじいちゃんとの別れを経験した子供達。私の父の
時と違って、一緒に住んでいない人の死は、どこかすこし現実感が薄く
まるでどこかに出掛けてでもいるようで、法事の席にいながらも、どこか
から「よくきたなあ・・」とおじいちゃんがあらわれそうだ・・と泣き笑い
する。


 満月を見上げながら想う。こんな風に3人で歩くのもそう何度もない
かもしれない。でも、いつの日か、家族を増やしながら、そのなかの誰か
と、こうして一緒に月を見上げるかもしれない。別れと出会いは繰り返す。
 

 何気ない夏の夜空の下で、何故か懐かしいような切ないような幸福な
気持ちが溢れてきて、子供が話しかけるのに、返事がふと遅れてしまった。
 どうぞ、月よ、いつまでも優しく輝いていてください・・・。