撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

自ら創り出すもの(どんど晴れ)

 石川の家に泊めてもらうことになった夏美とアキ。石川と女性と
5人のこどもたち。宮沢賢治のように生きたいと・・・。


 イーハトーブとは理想郷とか・・。しかしながら、それを求める
のではなくその中で自ら創り出す理想郷・・。


 どんなユートピアも出来た途端にそれは完全なユートピアでは
なくなる・・といったのは芥川だっただろうか、いろいろな理想郷を
語った書物はあれども、たとえばトーマス・モアのもののように
事細かに書き記したものもあるにはあるけれど、そうではなく、
その中に入って自らが・・というのはとても新鮮な発見だったような
気がする。


 子供達の話をする石川は何を想っていたのだろう。大人の都合で・・
と言い淀んだ先は・・。本当は子供達は迎えに来て欲しいと思って
いるのだろうと思うと切ないという石川。


 しかしながら、子供達の笑顔は明るい。失ったもの、手放したものは
いつまでも心を疼かせる。しかしながら、「自らが創り上げる」力を
つけることは出来る。親と離れた子供達が、その悲しみを無くすことは
出来ないかもしれないけれど、自らが人を愛し、家族をつくることに
よって、その暖かい場所をつくることはできる。そして、自分が子供を
愛することを通じて、親のどうしようもなかった心を知ることもできる
のかもしれない。愛していることを自ら信じることによって・・・。


 あまりにも都合良くめぐり会いすぎよねえ・・と、思わないでもない
夏美と石川たちとの出会いではあるけれど、人と人とのめぐり会いって
そんなものだと思う。望むひととはいつか逢えると思うし、すべての
出会いには何らかの意味があると思う。


 夏美と石川が互いに、泊まってくれて子供達が喜んでいる・・いいえ
こちらこそ泊めていただいて・・とありがとうを言い合っているのが
いいなあと思った。感謝を感じることが出来るときは心に余裕がある時
だと、このごろつくづく思う。そして、余裕があるときこそ(いや、
どんなときでも余裕を持つことを心掛けたいとはおもうのだけれど)
自分の世界が広がるとき・・もしくは、自分のまわりに爽やかな風が吹く
ときではなかろうか・・などと感じている。