撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

恋する女(どんど晴れ)

 恋する女は可愛らしい。恋する女は残酷だ。


 柾樹が帰って来てからの夏美は、ほんとに生き生きとしている。大好き
なひとのそばにいられるってこんなに幸せなんだ・・って思うくらい。
 そして、その天真爛漫な明るさは、時として目障りなほどに無神経に
見えることすらある。本人になんの悪気もなくても・・。


 彩華の心が見え隠れする。あれだけ見事にいいひとを演じてきたのに、
柾樹の前では、思わず驚いたりする素の部分が見えるし、明るい夏美の
前では、思わず迷惑そうななげやりな対応をしそうになったりする。
 夏美・柾樹のツーショットから彩華の登場まで流れ続けていたBGMは
彩華のあたらしいテーマソングなのだろうか?


 ひとの心なんて単純なものだ。あれだけ憎らしかった彩華に影が見え
るとどこか気になって仕方がない。柾樹への恋心?
 わたし、幼なじみってあんまりいないんで、よく分からないんですが
男のひとが、ファーストネームを呼び捨てで使うって、とっても抵抗が
ある・・。夏美ちゃんが気にしてないから別にどうでもいいんだけど、
自分の恋人が、ほかの女をそんな呼び方したら許せないなあ・・。


 そのひとにしか分からない、過去の時間と、それまでの関係がある。
幸せな人は、何もこだわらずに、その昔を懐かしむ。しかしながら、
その後、いろいろなことがあって決して幸せが続いていたとは言えない
彩華にとっては、柾樹との思い出と、その呼び方をされていた時間と
いうものは、特別なものがあるのではないかと思ってしまうのです・・。