撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ささやく雲

 久しぶりによく寝た。後先考える暇もなく寝てしまった。人間の
身体は正直なもので極限まで来るとどうにかしてしまうものだ。その
おかげで今日はまたきついスケジュールを送ってはいるけれど、夢さえ
見ずに眠れたそのほどけ方はある意味心地よい。


 仕事に向かう車の前面に広がる夏の青空と大きな雲。ああ・・綺麗
だな、写真に撮りたいな・・と、ちょうど赤信号だったのをいいことに
携帯をとりだそうかとたくらんだそのとき、すぐ隣に派出所があること
に気がついた。危ない危ない・・・いえいえ、見られてなくてもそんな
ことしちゃいけないんですよ、もちろん。気を引き締めるのにはとても
いい教訓。見られていてもいなくても、見つけられてもそうでなくても
してはいけないことはしてはいけないのよね・・それをきちんと自分で
律することができるかどうかが大切なことでしょ。
 

 これはいい子ぶってるのでもなんでもなくて、このごろ切実に思う
こと。人にどう思われるかではなくて、自分として恥ずかしいかどうか
それがとても重要。どんなにひとに言われようとも、やるだけのことを
やっていれば堂々としていればいい。でも、ちょっと不安を感じていた
ことを突っつかれるととても脆くなってしまう。やるべきことはやる。
完全にはムリでもやれる範囲ではじめること!


 苦笑しながら携帯に伸ばしかけた左手をハンドルに戻し、ふたたび
青空を映すフロントガラスを見つめながら車を走らせた。ビルの合間に
見える雲が恋しく見える。高い空を目の端に入れながら前進していると
ふと目に入った看板。青空と雲をバックにくっきりと浮かび上がる文字
「はい!元気」もとい「ハイ・ゲンキ」・・・・・!!


 なんだか元気出しなよな!と背中を叩かれたような気がして、ひとり
車の中で声を上げて笑った。空の声かしら?雲の声かしら?