撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ほんまのこと(ちりとてちん)

 糸子さんがかけた召集に応じて集まった順子・友春をめぐる
ひとびと。順子さんを和田家に迎えるという秀臣、魚屋食堂を
継ぎたいという友春、製作所を継ぐことから逃げているという
順子、焼き鯖なめるなよという幸助・・・。


 冷静な観察力通り越して気色悪いわ!といわれた正平の発言
は、重くなりそうな場面に笑いをくれただけではなく、本当に
「新しい命を授かったという幸せ」をどこかにやってしまわない
ためのとても救われる発言だった。そのあとの、時折挟まれる
おとうちゃんと正平の一言はなんとも言えない空気を作って
くれてたなあ(笑)。とっても大変な場面では、みんな普段の
自分のキャラクターとは違う面を見せるんだ・・なんて考え
ながら観ていた。心の底に隠していた本当の気持ちを一生懸命
外に出してなんとか伝えようとしている気持ちがそれこそ
「愛しい」と思えた。


 そんな中で順子もまた本当の気持ちを問われる。考え抜いた
ようなことをみんなの前で話す順子。本当にそう考えているのか
と、順子の固い決心を見せられたようで、何もいえない周りの
みんな。その順子にただひとりなんで嘘つくん?とくってかかる
喜代美。友春さんのこと愛おしいっていうてたやないの!と。


 なんでほんまのこといわんの?という喜代美についに心の内
を見せる順子。「こわいんや・・」と。天から降ってきたこと
ではなく自分でしでかしたことだからこそ怖い・・と。


 順子の話を聞きながら、自分でしでかしたこと、自分で選んで
決めて自分でやったこと、そしてその結果が自分の身に起こること
自分でその事実に責任を持つこと・・それを意識していくことが
大人になる、ということなのかな・・と思った。どんなにしっかり
しているように見えても、それは守られた世界の中の、選び取られた
物事の中からの選択にすぎなかったのだ、今までは・・。その
世界を超えて、自分の人生を生きていくことが、親の庇護を離れて
自分の人生を歩んでいくということなんだろうと思った。


 順ちゃんの言葉があったからこそ、自分の気持ちに正直になれ
た、だからこそこの町を出て、草々にいさんと出逢うことが
できた、幸せになることができた・・という喜代美。


 「一番好きなひとと幸せになってよ」
 新しい二人で新しい世界を作っていこうとしているひとに向かって
の、一番シンプルで、一番本当のはなむけの言葉だなあ・・。
 そして、それは喜代美自身が草々と歩み始めた心の根っこにある
「ほんまのこと」に違いない・・と思うのだ。みんなの様子を
見つめていた草々にもその喜代美の心はきっと伝わっているよね。