撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

 3

 画廊を出て、本当の光に晒されながら、なんだかさっきの絵の中の
光の方が優しかったなあ・・なんて考える。冬も終わってないくせに
5月の紫外線のように目をちらつかせる気がして下を向いた。


 わたしのブーツのとなりに、男物の靴が並ぶ。またもや、いつもの
私には考えられないようなスピードで顔の向きを変えてしまうと、
さっき同時に光の絵を見ていた男の人が立っていた。
「コーヒーでも飲みにいきませんか?」
正直にいえば、ことわる理由を口にすればするだけ、不自然な自分を
この初対面の人にさらけ出すであろうのが恥ずかしくて、ちいさく
「はい」と頷いた。この人がそう言わせたんだわ・・などという嘘は
つきたくない。そう、わたしがそう頷いたのだ。