撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

名づけないままに

いまはまだ名まえをつけたくないのです
この柔らかく暖かい
かたちも定まらないものに
いずれ名まえをつければ
みんながそれをそう呼んで
みんながそれをそういうものだと思うでしょう
そうしてわたし自身も
それをそういうものだと思い込み
それを嬉しがったり思い悩んだりするのでしょう


世の中にくりかえしくりかえしあらわれる
だれもが知っているものだとしても
わたしのなかにうまれたこのちいさなものに
ありきたりの名まえなどつけたくありません
産まれたばかりの赤子に
いちばんふさわしい名まえが決まるまで
ただその子を
見つめ、撫で、慈しむように
胸にてのひらをあてて温みだけを感じていたいのです