撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

澄んでいく・・・ALL OUT・・・

ねえ
草や土のめざめるにおいはしないけど
東京の朝もすてたもんじゃないね
こんな澄んだ光や大気の中を走るとね
精神とか思考とかそんなものがすごく澄んでさあ
自由でしなやかで
それこそのびやかにはてなく広がってゆくような気持ちになるよ
昨日憎んだものも今日出会うものも
みんなみんな好きになれそうな
そんな優しい気分になるんだ


走って
走って
走って
やっぱり走るんだ


そしていつかさあ
いつもいつもこの優しい気分をね
この体の中にささえていられる強さみたいなものをめざしてさ
走っているんじゃないかなって思うときがあるよ


内田善美作「空の色ににている」の主人公の言葉


この人の作品のなかにはときおり「澄んでいく」という表現が出てくる
発表された当時に読んだ時には特に気にかけてはいなかったが
何回も読み返すうちに
これが私が目指しているところなのではないかとふと感じたりもする


自分の意思で始めて
自分の意志の及ばないものに巻き込まれ
それでも自分の存在を確認し
そして
自分の意志だけでもなく自分の意志がないわけでもなく
ただ流れていくように進むものごとを感じる
そこにいながらにして
そこで透明になる感覚
なにかときれいに重なって
自分のものだけではない力を感じるとき


なにかに区切りをつけようとしているひと
何かを成し遂げようとしているひとが
そんな澄んだ気持ちになれますように
すべてが終わって空を見上げたときに
わけもなく涙がこぼれて
その涙すら心地よいと思えるほどに
すべてを出し切れますように・・・