撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

 眠り

真夜中に目覚める
暗闇に目が慣れるまでじっとしている
目が慣れたからといって動く必要もなにをする必要もないのだけれど


夢を見ていたような気がする
今の今までその夢を覚えていたはずなのに
どんな夢だったか思い出そうとすると
ふわふわとさらさらとかたちをなさずこぼれていく
思い出したくないのか思い出したいのか
今となっては自分でそれすらも分からない


暗い空に覆いかぶさるように木のシルエットが浮かぶ
それでもその隙間から射しこむ月の光は蒼く澄んでいる
風が吹いて梢が揺れているはずなのに
月の光は変わらず明るく光を注ぐ
寒さも忘れて月に見とれていた
右手に温もりを感じたかと思うと
月の明かりがかくれた
温かな唇に包まれる
遠い記憶を呼び覚ます懐かしい温もりだった


もう少し
もう少しだけはこのままでいようか
穏やかな眠りの中で漂っていようか