撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

環の一歩(どんど晴れ)

 女人禁制の板場へ女将環が踏み出した一歩は、そのまま女将としての
環の大きな一歩だったに違いない。なにか事を起こすときに、環はいつも
大女将カツノの顔色を伺っていた。ある時は尊敬と緊張を込めて、ある時は
嫉妬や疎ましささえ混じる複雑な想いで・・。


 今日の環は誰のことも振り返らなかった。ただ、自分の心と向き合い
覚悟を決めて、自ら一歩を踏み出したのだ。


 とんでもない板場の有様ではあったけれど、その家族を見つめる環の
眼差しは暖かく、笑顔は満足そうだった。そして、お客様を迎える環の
堂々と落ち着いていたこと。もう、環の眉間には立て皺がよってなかった
ような気がする。


 しきたりを自ら破って加賀美屋の窮地を乗り切ろうとした環は、いままで
どの女性もはいらなかった板場に入るのと同時に、大女将さえも乗り越えて
本当の女将になったのではないか・・と感じさせられた。そしてそんな環を
笑顔で眺める大女将。未来へは、あたらしい風を受けて進むのだ。


 さてさて、お料理、お客様へも好評のようでよかったですね。あんな
急なメンバーで守れるくらいの加賀美屋の料理だったの?っていう突っ込み
と、美味しいって食べてる客のどれくらいがほんとの加賀美屋の味が
分かってるの?っていう突っ込みとどっちが多いかなあ?(笑)


 でも、あんなにみんなが心を合わせて一生懸命作った料理は、いつもと
多少味が違っていたとしても美味しくないはずがない!って思う。それと
家族の誰もが、伸一ですら、器のことやら、材料のことやら、指示されたら
すぐ動けるほどには知識があるというのは、やはり家族までその空気を
知っているという老舗旅館の強みじゃないでしょうか。皿洗いひとつだって、
慣れないひとがやったら役に立つどころか邪魔なだけだったりしますもの
ねえ(笑)。