撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

重い青空

 日曜日は心配しながら降られずに済んだ運動会。白い雲が空を覆い思いの外
涼しくて助かった。一日明ければいい天気。しかし外に出て空を見上げると
雨雲を太陽が照らして無理矢理青く染めているような濃く重い青空が南の空に
映っていた。


 6月か・・ふと思った。いつの間にか、初夏から夏へ・・。もう春は
終わった。


 具合の悪い義父の見舞いに子供二人を連れていく。運動会の代休に文化祭の
代休、部活もなし。これは私に二人を連れて行けと言われているも同じで
しょう。時々意識がはっきりしなくなることもある・・と聞いていたけれど、
二人の顔をみると、満面笑みの義父。「分かる?」と言われ当然!との顔
つき。声こそ出せないものの気持は伝わる。


 めずらしく義母が私を病室の外に呼ぶ。話したいことがいっぱいあった
ようで面会室でいろいろな話を相談される。どれももう決断するには悲し
すぎるようなものばかりで、「おかあさんの考えられるとおりに・・」と
手を握って言うのが精一杯だった。自分のいなくなった後のことをいろいろ
指図したという義父の話。今まで義父が作っていた畑の片づけを義母がして
いたら近所の人が手伝ってくれたという話。話そうかどうしようか迷っていた
義父の90歳を過ぎる姉が偶然知った親戚から話を聞いて子供家族とともに
大分から来てくれたという話、もっともその時はおとうさんひとっつも
分かってないみたいに半分眠ってたのに今日あんたたちが来てくれたら
あんなにしっかり分かるんだものねえ・・久しぶりにお父さんの笑顔を
みたよ・・って。


 また来ますから待っててくださいね・・って病院をあとにした。帰りの
車で子供達は寝ていた。少し早く目覚めた長男と少し話した。考えたくない
ことは一切口にしない。いつもさっさと家を出ていく長男も今日は何の文句も
言わずについてきたことを思いだした。小さな声で彼が今日行けて良かったね
と呟いた。


 帰り道、高速道路から海が見えることに初めて気づいた。海から続く空を
見上げると、いつのまにかきれいな夕焼けに変わっていた。