撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

母として女将として(どんど晴れ)

 伸一が母親に自分の想いをぶつける。かあさんはいったいどっちの味方
なんだ!母親を最後のところで頼れないなんて悲しい・・と。


 母、環の苦しい表情。母親として息子が可愛くないことなんかない。
でも、女将としてそんな私情で目を曇らせるわけにはいかない。本当は
立派になって文句なしに息子が跡取りになってくれれば何もいうことは
ないのだけれど、「女将」という存在が必要な旅館にとって、それを
抜きにして考えることもできないし・・。


 帰ってこない母親を待つつばさくん。自分のこころを守るために自分の
こころを厚く厚く包み隠す。仕事を懸命にする母親にそのちいさな子供の
こころが見えなくなるほどに、大きく強くみせて・・。それは、彼なりの
母親への愛情。


 人はみな、ちいさな子供のこころを自分のなかに持っているのだろうか?
凡てを投げ出して我が儘言ったり、凡てを晒して受け入れてもらったり
そんな、遠い昔に母親に求めたような心持ちを・・・。


 そんな甘くて幸せな時間は短い。ちいさな子供のあいだに、そんな時間を
愛され、甘やかされ、凡てを受け入れられた記憶を、しっかりと刻みつけて
おくことは大切なことなのかもしれない。


 伸一に寄り添うえみこさんは、とっても優しく見えて、きっと彼はその
淋しいこころを彼女にだきとめてもらえそうな気がしたよ・・。夏美が
つばさくんに言ったように、素直になれれば・・ね。