撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

あなたのために(純情きらり)

 言葉というものは、なんてとらえどころの無いものなのだろう。
愛を詠い、人生を語り、人を励まし、真実を伝える。その一方で、
どんなに懸命な想いも、悲壮な覚悟も、言葉にしたとたんにただの
言葉になり、かたちを得た途端に一人歩きを始め、もうそのものでは
なくなる。


 しかしながら、どんな真実にも本当はいろいろな顔があるのだ。
思い詰め、崇め奉るほどの、尊いものですら、この場に引きずり出し
現実の光を当てれば、決して一面だけの見方で終わるものではないのだ。


 笛子が久しぶりに怒った。
「なんのためにあたしが今まで歯食いしばって頑張ってきたとおもっとるの
 いろんなこと子供達に我慢させてきたとおもっとるの。あんたにこんなこと
 させるためじゃないわ」


 笛子はいつ気づくだろうか。冬吾の人生は自分のものではないと。
こどもたちの人生もまた自分のものではないと。


 ひとは、いつも関わり合って生きていく。愛する人とは、全てを重ね合って
生きていきたいと思う。人を愛したいと思うとき、自分が愛していると思って
いるが、愛していると実感できるときは、いつも愛を受け入れてもらって
いるのだ。尽くしているときもまた、その気持ちを受け取ってもらっている
のだ。守るしかない幼子ですら、愛しながら実はその子から愛をもらっている
のだ。自分の従属物ではない。


 愛が独りよがりに陥ると、関係が滞って、ぎくしゃくする。いつもさらさら
と淀まずに流れ、適度な温度を保ちつつ、なめらかに変化に対応出来ればいい
のだろうけれど、いちど固まっちゃったものは、荒療治で修復しなきゃね。
愛と希望を捨てなければ、なんどでもやり直しはきくと思います。
 笛子頑張れ!