撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

約束は明日のために(純情きらり)

 桜子と達彦の連弾は美しく、かわいらしかった。
 河原での、桜子と達彦にはびっくりだった(特に桜子)。朝にはびっくり
しすぎて、テレビの前で固まり、ここでも触れることができなかった。昼の
明かりのなかでようやく直視し、味わうことができた。


 「明日はどうなるかわからん。わたしには今しかない。今のわたしを
全部あげたい。もらってください・・」と桜子。ボタンをはずし始めた
桜子を驚いて制止し、「明日はどうなるかわからん」といった達彦に
いった言葉です。桜子の言葉を聞いた達彦は、やさしく唇を重ね、桜子の
ブラウスのボタンをかけ、「きっと帰ってくる」と約束する。桜子の
行動にはびっくりしたけど、女にとってはそれはその場限りのものでは
ない。特にあの時代では、もう一生を捧げるほどの決心ではなかったか?
・・まちがっても一夜の思い出なんて考えちゃダメですよ、特に殿方。
 達彦はそれが分かる男だったのだろう。桜子の想いと覚悟を確かに
受け取ったのだろう。そして、分からない明日も、きっと生きていく
と、決心したのだと思う。


 明日はどうなるかわからない。それは、だれに限ったことでもなく、
いつの時代でも同じ。もちろん、あの時代はだれもがそれを自分のもの
として実感するほど厳しい時代ではあったのだけれど。


 今しかない、と思えるほどの追いつめられた現実。約束は明日のために。
見えない明日を生きるための、大切な言葉。かけがえのない心の支え。
 約束を心待ちにできる・・・というだけで、現在はなんと幸せなこと
だろう・・・。