撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

記憶

記憶は軽々と超えていく
季節を
場所を
時空すらも


街角の草花に
川の流れに
吹く風に
一杯の紅茶に
一枚の絵に
一歩の距離に
眩しい光に
抑えた呼吸に
頬をなぞる指先の感触に


数千数万それ以上の記憶のなか
不意に浮かび上がるもの
目覚めたときに
蘇るように思い出す景色


淋しさすら
抱き続ければ温かくなる
執着を濾せばそれは愛しさ


名前すら要らない
ただそこに在るだけでいい
ときと場所を同じくして
生きていた記憶だけでいい