撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

指先から生み出すもの

知り合いからの情報でとある講演会へ
はじめから興味があったかどうかは不明
でもものをつくるひと
ものごとを追求する人の話って
ぜったい面白いと思う
「面白い」って大事なキーワード
うごく価値ありと思ってる


海洋堂センムこと海洋堂社長の宮脇修一さん
おふたりの造形師さんとともに
(その中のおひとりは講演会のあった大学のセンセイをなさってる)


海洋堂とフィギュアというもの、原型製作の現場と造形師という仕事
そしてその造形師さんたちの個性と仕事ぶり
そこから生まれる数々の作品のこと


次から次へとつづく興味深い話
一般的にはとても褒め言葉には聞こえない形容で語られる
でもなんとも仲間への愛情のこもったことばの数々


タイプの全く違ったおふたりの造形師さん
寡黙で生真面目な性格を思わせる加藤さん
一方
「自分が飽きる前に作り上げてしまうんですよ
 褒められること、認められることが大好き、そのためにやってる」
などとはきはきとしゃべり笑わせてくれる片山さん


片山さんが作ったものを製品にするための仕上げを
加藤さんがすることもあるらしい
「片山の作ったラインを消さないことを心掛けて仕事する」と
作品として押さえるべきところを押さえるという話があったが
その中にまた、そのひとの作る意味というものもあって
それを十分に分かって認めているからこそできることなのだろう


中にはひとの作品を仕上げるなんて嫌がるやつもいっぱいいるんだけど
加藤はそれができるオトコなんですよね
このふたりが組むと最強なんですよ、とセンム


そんな加藤さんがどうして造形師を?と聞かれると
すこし考えてすこし困ったように
「作らないと生きていけないんで」と・・・
ずっと昔から、ずっと小さい頃からとにかくなにかをつくってた・・と
そしていつしかここまで来ていた・・と


そのなんとも自然体の言葉と佇まいがカッコ良すぎ!


一方、終始どんどん攻撃は最大の防御とでも言わんばかりに
ちょっとばかし偽悪的なまでに発言している片山氏が
なにかの話題のなかでぽろりと漏らした
「自分で作るって照れくさい」というひとこと
それで謎が解けるように彼の発言が輝いてくる


タイプは違ってもその指先から生み出すひとたち
絵や映像をつくる人が三次元を二次元に焼きつけるのだとしたら
その二次元からさらに想像を加え想像をかきたてる三次元へと繋ぐひと
単に縮尺を守るだけでなくその大きさでいちばんらしくなるように
微妙なバランスを調整していくのだという話も聞いた
そして生まれ出ずるもの


講演の前半で好きなことばかり十年くらいひたすらやってみたらいい
とにかく作れ、実際になんども作ってみることだ
というお話をされていた宮脇氏
どこがこの仕事の魅力かと言われると
指先からものが生まれてくるその瞬間がたまらない・・と
リアルの感触、リアルなかたち
スマホの平面をすべらせるだけでは決して感じられないこと
その自分の手、指先で実際に触れる様々な感覚を
どうか鈍らせないようにと願う気持ちをその奥に感じた


物語が文字からイメージして心を揺り動かすのだとしたら
フィギュアは文字通り次元を増やして迫ってくるのだろう
想像と創造
おなじ音をもっているのには意味があるのかもしれない


さて
片山氏が「飽きる前につくってしまう」
「息継ぎもせずに一気にやる」
「最初の情熱が冷めない間につくりあげる」
などと言われている間
レベルはまったく違うもののそういうのが分かって苦笑していた
彼の場合はとてつもないセンスとエネルギーを注ぎ込むための
力配分の違いであるのだろうけど
その性格と似通った感覚、どうも自分で感じたことがある
逆に言えば自分の性格はもしかすると体力のなさからきているのか?
行動を変えると性格も変わっていくと聞いたことがあるけれど
そんなことをこれから目指すこともできるだろうか?
生まれて初めてと言っていいくらいはじめて
ひとから教えてもらって水泳をするという経験をした先週
これまでいかに自分のからだに無駄な力が入っていたのか感じた
これからもう少し続ければ息継ぎの仕方も習えるはず
そうすればいままで見えなかった景色が見えるかもしれない
と、この歳になってまた新しい自分に会うことを楽しみにしている