撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ひとは言葉で・・

知り合いの合唱団のコンサート
高校時代、卒業生でその合唱団の指揮者をされていた先輩
ときは流れて
わたしたちの二つ上の先輩がその合唱団を引き継がれていた


後姿からかすかに見える白い横顔と美しい指先
ソプラノのパートリーダーをなさっていたころ
私たちに向かって見せたそれらを思い出させる
春から夏の季節の中で毎日過ごした時間のこと


ステージは進み
最後に客演指揮者として創立時の指揮者
その卒業生だったかたがタクトを振る
とはいえ昔からそうだったように指揮棒はなく指先で
そしてその動きといえば
これ以上ないくらいに削ぎ落としたかすかなそして確かなもの
指先のほんのすこしのうごきでその場の空気を動かすような
そしてそれに応じて響く歌声


最後のその曲は「夜空ノムコウ
あれから、あのころ、それがまさにあのころを連れてきて
気がついたら泣いていた
校舎の工事で音楽室さえ使えない時期があり
オルガンを抱えて移動させて練習した日
想いつづけた日々
歌い続けた日々
思い出すことがらは違えども
そのころ同じ歌を歌った友人も隣でまた涙していた


小さい頃から今までに読んだ本
これまでの毎日に食べたもの
折に触れて歌った歌、諳んじた詩
そんなものでわたしたちはできているのだろう


日が暮れた街並みを歩きながら
いまでもあのころの合唱曲を歌いながら帰ることがあるよ
と、友人がつぶやく
ああ、そうだね
大好きで忘れられない曲、いっぱいあるもの
でもふと口をついて出たメロディーと歌詞が
あのころ嫌になるほど練習した曲だったりすることもあるな



楽しかったこともつらかったことも
好きだったことも実らなかった恋も
ぜんぶ今の私をつくってくれてるんだろう


「人は ことばで
 鳥のように飛び
 花のように咲く」


浮かび上がってきた一節
書き記したかった今日という日