撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

 変わり目

季節が変わるときには懐かしい風が吹く
初めてなのに知っている気がする
そんな不思議な懐かしさ
しかしながら今年の季節の変わり目ははっきりとせず
秋を通り越していつのまにか冬にはいっているような・・
そんなことでだれにも言えない不機嫌な気分をいくらか胸に抱いていた


ある日のこと
急ぎの仕事を終えてビルを出ようとすると
大きなガラス窓の外にちらちらと輝くものをみた
雪?
まさか


外に出てその通りの街路樹が銀杏だったことを思いだした
見事な黄金色
そして桜吹雪さながらにその葉が舞い落ちているのだった



しばし足をとめて見とれる
あれ?こんな風景みたことあったっけ?
銀杏並木が金色になっているのは記憶があるけれど
銀杏の葉が雪のように舞っているところは・・・



ふうとため息をついてわれに返ると視線を感じた
見廻すとこちらを見ている人がいる
わたしがそのひとに視線を合わせると
その男の人はゆっくりと片手をあげて小さく手を振った


息が止まるかと思った
本当に胸が苦しくなりそうだったので
つとめてゆっくりと呼吸をしてなにが起こったか心を整理してみた
整理しようとしてもできるわけはない
あんまり突然に起こったことの理由などわかりはしない
「ランチを一緒に食べようかと思って」
彼のその一言だけが今の真実に違いない


その一瞬が見えたとしても見えなかったとしても
変わり目はほんの一瞬
季節は変わった
いや
季節は動き出した
そう感じた