撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

All out and Enjoy

 寒い冬の日に立ち通しでラグビーを観ていると、数時間が経つ頃には
からだがカチカチに凍ったような気分になる。


 自分の気持ちをどう表わしたらいいのかわからないような・・・今
もっている力をどう使えばいいのか悩んでいるような、いまひとつ出し
きれずに終わったような試合。


 素直にシンプルに動ければいいのに・・と思う。勝ったって負けたっ
て、そんなこと大きな問題じゃない。生き生きと動きまわる、彼らの笑
顔が見られたら、それだけで十分なのに・・。


 「試合に出たいの?」と、聞いてみたい。
 「ラグビー好きなの?」と、聞いてみたい。


 もう十分ラグビーの魅力に取りつかれている人々にはそんな必要も
ないのだけれど、まだ、たまたまラグビーに出会ってしまった・・ような
そんな子供たちに、ラグビーの楽しさを決定付けるものはなんなの
だろう?勝つこと・・もあるだろうし、トライをとることもあるだろ
う。もちろん、それを目指していくのだろうけれど、その中でもっと
揺るがぬものに出会うときはどういうものなのだろう?と、思う。


 次男と今日の試合のことを話していたら、なんだか観て面白くなかっ
たという。負けても悔しがってなかったし、冷めてるように見えたって
いう。僕がもし試合に出たらもっとやる・・ぶつかり負けたら悔しい
からもっとぶつかってやる!って・・。そう、彼の話を聞いていたら
なるほど昔よりずいぶん気持がある・・と思えるものの、その彼が実際
グラウンドで何をしていたかというと、昔より成長したと思えるような
ことは特になにがあるわけではない。気持ちはもってても、それを顕す
術はまだあまりに幼稚すぎて外にあらわれていない。自分でそんな気持
ちがあっても、仲間とそれを共有したり、仲間にそれを伝えていったり
そんなことをしようという意識があまりに低いように見える。


 ただの仲良しグループじゃないんだよ。なんとなく集まる社交場じゃ
ないんだよ。ラグビーがここにはあるんだよ。もっとラグビーを使えば
いいのに・・と思う。やさしさも思いやりも、共感も、悔しさも
言葉にならないいろいろなものをラグビーに乗せてみんな出しきったら
いいのに・・と思う。そしてすべてを出し切ってそれでも伝えられない
素直な想いを言葉に乗せて吐き出せばいいのに・・と思う。


 心やさしい子どもたちは、自分の中にいろいろ抱え込みすぎて、
いったい何を悩んでいるのかわからないほどに自分の心を押し殺して
いるようにも見える。やさしさは臆病なまま・・思いやりは自分を傷つ
ける刃と混同して・・。どうでもいいような話題で、表面だけ笑って
いったいどこが楽しいんだろうと思う。


 ラグビーがあってあつまっている仲間。ラグビーがなければなんの
しがらみもない仲間。こんな風通しのよい仲間がいるだろうか!だから
こそできる淡くも深くもなれる関係を自分自身で作ってほしいと思う
のだ。


 思いっきり走り回って芝の上に寝転ぶ。深く深く息を吸い込んだ時に
見える青空の色・・・。同じ空を見上げる仲間・・。自分だけではない
と、思える一瞬。苦しみも悩みも・・そして笑顔も喜びも・・・。
 そんなことにいつか気づければ・・・。思春期に差し掛かるこの、
じぶんだけで手いっぱいの時期、何とかして殻を破って、皮を脱いで、
一回り大きくなっていってくれたらと願っている。