撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

だいじょうぶ(ちりとてちん)

 秀臣さんとの長い間の確執をとかした小梅さんは確かに
どこか変わったような気がする。


 秀臣さんを抱きしめる
 正平に寄り添い頭を抱えるように撫でる
 糸子さんの背中をポンポン・・とたたき髪の毛を優しく撫でる


 正平が塗り箸職人になろうが恐竜博士になろうが、なにもなく
すんなりとなるより、ずっといいものになる・・という。
 子育てなんてそんなもの・・大丈夫・・という。


 悩んでも大丈夫、甘えるのだって仕方ない、苦しみがあるのも
当たり前・・・。大丈夫だって言ってくれるひとがいてくれさえ
すれば・・涙の溢れるときに手のひらで受けとめてくれるひとが
いれば・・それは幸せなこと。もし、ひとり耐えなければいけない
時期があったとしても、その涙の温かいことに気づけることだけ
で、それだけでいいと耐えていればいつかきっとまた・・。


 ただ愛すればいいのだ・・静かに抱きしめればいいのだ・・
この生きている愛しさを・・目の前の、心に想う大切なひとを・・。
同じ時代(とき)を生きているという巡り会いの不思議を・・・。


 小梅さんはまるで漆黒の闇に浮かぶ優しい月と星星のようだ。
深く塗られたその奥から控えめに、しかし確かに輝く星を覗かせる
正太郎さんがつくった美しい塗り箸のようだ。