撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ウソから出てくる真実(ちりとてちん)

 前半、若狭ちゃんの名セリフでおお、おお、成長した
もんやなあ・・とそれはそれで感動したもんでしたが、
奈津子さんのいうとおり、「酔ってる」場合じゃなかった
です。


 正平の前でホントのことを話すユウスケ。もう、どれが
ホントでどれがウソなんかひとっつもわからん薄っぺらい
ヤツやん、こいつ。にいさんたちが盛り上がらんいうのも
なんだか分かるわ・・なんて思うたりして・・・。


 まえに居合わせた清海が「嘘つかんとやってられん時も
ある・・」とつぶやいていた嘘とは全然違う。四草の算段
とも、これまた全然違う。


 嘘というのは、どんな嘘でも自分の心に波風が立つもの
だと思う。時に心に傷を負うものでもあると思う。どんな
小さな嘘でも、ちくりと胸が痛んだり、どこかで後ろめたい
気持ちがあったり、反対に楽しい嘘なら、ドキドキとした
いたずらゴコロなりの心弾みがあるものだと思う。それは
嘘は何もないところから生まれるものではなく、自分の
心という動かしようのない真実から、たまたまこぼれ出たり
軋んだり絞られたりしたときに出てしまったりするものだと
思うから・・・。


 ユウスケにはそれがない。いつものっぺりとした顔で
いけしゃあしゃあとウソをつく。だから最初から見ていて
可愛く思えなかったのだろうか・・と思う。


 四草がひとと関わりを持ちたくないと思いつつ、その実は
愛されたくて愛されたくてたまらなかったけれど、そんなこと
をすると自分がどうなるか分からなくて一歩踏み出せなかった
ような印象だったのに比べると、ユウスケはひととのつきあい
くらい何とでもできる・・舌先三寸で世の中などどうとでも
渡っていける・・とでも思っているようななめたところが
感じられる。・・その奥にはどんな気持ちがあるのか?多分
本人さえも気づいていない・・いや、まだ知らないのかも
しれない・・どんな気持ちが表れてくるのか。


 いまの若者は何も経験していないのに、溢れる情報で何でも
分かっているつもりになっている・・という話を聞くことが
ある。はからずも自分のついたウソのようにおかみさんに
横っ面をはたかれてしまったユウスケ。自分のつくるウソよりも
世の中にはもっといろいろなことが起こり、それには痛みも
温かみもあるということに気づいたら、彼の顔はどんな風に
変わっていくのだろう・・・。