撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

涙を見せる相手(ちりとてちん)

 草若師匠の病気が徒然亭のみんなに分かってしまう。それぞれの
悲しみを耐える姿がたまらなかった。


 高座を前にして笑顔を作ろうと鏡に向かう草原。
 平兵衛師匠に水をやる手が震える四草。
 背中合わせで泣き出し、たまらず抱きしめ合う草々と若狭。


 例のところで「おばはん、水くれ」といつものように座りながら
涙を隠すこともできずに溢れさせる小草若。ひとりぼっちでは
涙を流すこともできない。誰にも気づかれずに流す涙は辛すぎる。


 涙を見せる相手がいるひとは幸せだ。まだ幸せなうちだ。しかしながら
草若師匠がいなくなればひとりぼっちになる、小草若が気に掛かる。また
血はつながっていなくても、やはり一人きりになる、九官鳥しかそばに
いない四草が心配だ。このふたりがこのあとどう絡んでくれるのか・・。


 師匠の病床で泣ける若狭は幼くて可愛い。「笑わんかい!」と言われ
そして・・「俺を笑わしてくれ」と言われる。


 涙を越えたところに笑顔があることに気づいたら・・・その笑顔が
・・それでも前を向いて顔を上げて生きていくことが、どんなに大切で
かけがえのないものなのか、やっと分かるのだろう。