撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ラグビーに教えられること

 花園での高校ラグビーが終わった。決勝戦は東福岡と伏見工業。
前半のワクワクから、後半の息もつかせぬ緊張へ・・そして気が
つくといつの間にか涙が出ていた。何も語らなくても伝えられる
ものはあるのだ。次から次へと攻撃を繋げてくるそんな攻めの強い
印象のあった東福岡が、伏見工業にずっと攻め続けられながら、
ひとつの穴もあけられることなく、守りに守ってその強さを見せて
くれた。ほんとうの強さは、いいときにも逆境の時にでも変わらず
にいられるということなのかと思わせられた。もちろん、攻め続けた
伏見工業のその粘り強さにも驚嘆。今までの試合で気付かなかった
両校の強さと素晴らしさを見せてもらったようだった。また、素晴ら
しい戦いのなかで、お互いに成長していたのだとも思う。そんな
色々な意味ですばらしい決勝戦だった。


 花園直前に事故でメンバーの一人を失った東福岡。いままで、敢えて
そのことにはあまり触れていなかったけれど、今日監督がお話に
出されたのも印象的だった。


 訃報を聞いたその日、私達もまたラグビーの練習のグラウンドに
いた(東福岡ではないけれど)。まだ、情報があやふやだったその日
彼を知っているラガーマンの中学生は「事故に決まってる。彼がラグビー
を捨てるはずがない!」と言いきった。そして、目前にせまっている
花園に出られなかった悔しさ、ずっと続くはずだった未来を失った
無念さを想像するのは難くなかった。


 その時、その子が続けて「でも・・もし大けがしてラグビー出来なく
なったら死にたくなるくらい辛いっちゃない?」といったのを周りの
大人数名は聞き流さなかった。
 死にたいくらい辛いのと、死んでしまうのとは全然違うからね!
 もし何かあったとしても絶対早まったらいけないからね
 今はプレイしたいだけだろうけれど、ラグビーに関わることは
 いろんなやり方でどんなことでもできるんだからね
 ラグビーしてるときはラグビーがいちばんだろうけれど、人生には
 ラグビーだけでなくいろんなことがあるんだからね


 決勝戦の最後の攻防を見ながら、そんな話をしたことを思い出して
いた。倒されても倒されても攻め続ける子、幾度も向かってくる相手に
ひたむきにひたすらにタックルにいく子、何の欲も、損得勘定もなしに
自分の力すべてをつかって仲間を信じて戦い続ける選手たちを見ていると
もう、どちらが勝つとか負けるとかじゃなく、ただ涙が溢れてきて仕方が
なかった。きっとこの子たちはラグビーをしながら、強烈に生きている
ことを実感しているに違いない。・・そしてノーサイド


 たかがラグビー、されどラグビーなどとよく話すけれど、ラグビー
ラグビーでしかないけれど、その中には生きることの様々なものが
詰まっている。現在の社会ではあまり経験できない、ぶつかり合いや
痛みや、身を投げ出す勇気や、我慢や・・そんなものまで詰まっている。
 懸命な彼らのプレイを観ながら、そんなことを考えてしまうのだ。


 だからこそ、ラグビーをしている子供達から大人の私の方がいっぱい
のことを教えてもらっているような気がする。そのことに感謝し、大人と
して彼らに、人生だってラグビーと同じで、楽なことばかりじゃない
けれど、その先には素晴らしい充実感が待っている・・と胸をはって
言えるようになりたい・・と思うのだ。