撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

笑顔で・・(どんど晴れ)

 夢のようにすぎた年月だった。さくらを見上げた日が昨日の
ことのように思えた。とても、幸せに・・明るく始まったふたり
だけれど、様々なことがあった。別れの決心までも・・・。


 ひとは変わるもの・・いえ、変わることが出来るものなのね
と、夫に向かっていう環の笑顔はいまは本当の笑顔だった。


 みんな加賀美屋が好きなんですね・・ああ、長生きはするもん
じゃが・・と言い合うふたりも、ひとりぼっちの淋しさを抱えた
時江と、ころころ変わる番頭ではなく、満ち足りた表情のふたり
だった。長生きはするもんだ・・そういえるって幸せなことだ。


 みんなの笑顔があるからわたしも笑顔になれる・・そういう
夏美の周りのさまざまなひとたちの笑顔。旅館のなかで・・
そとで・・母屋で・・恵美子さんとこどもたちの笑顔に胸がキュン
となった。浩司のとろけそうな笑顔はよかったね!って言って
あげたくなった。


 おもてなしの心で・・思いやりの心で・・


 何かの物語のなかで、子供は未来からの客人だから、きちんと
おもてなしをしてやらなければならないよ・・という言葉を
聞いたことがある。子供・・自分より若い人・・自分より経験の
浅い人にはもちろんその心で・・。そして年長者、目上の方には
もてなされる謙虚さをもって、日々を過ごしていこうか・・。
 生きていくこと自体が旅だとするのならなおさら・・。


 こだわらず、なげださず、丁寧に、日々を過ごしていけたら
と思う。出逢った人々と、目指す明日の自分を信じて・・・。


 夢のような・・・カツノさんが加賀美屋のみんなを笑顔で
見下ろしているのがなんとも・・。世界は、自分は、生きている
ものだけ、自分だけのものではないのだ。過去から、そして
未来へ、遥か続く、命と心に敬意をはらって・・・。