撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

その笑顔があれば・・(どんど晴れ)

 夏美が披露宴の席へと戻っていくのを、その目に焼き付ける
ように見つめるカツノ。そして微笑。そんな大女将カツノの
眼差しをしっかりと受けとめるように視線を合わせる夏美。
そして、微笑みちいさくこっくりと頷く。


 披露宴のお色直しの合間か、柾樹と夏美がカツノのもとへ
訪れる。あまりにこころを込めて色々なことを伝えようとする
カツノに小さな不安を感じる夏美。そんな夏美にいつものあの
笑顔を見せて・・というカツノ。その笑顔は魔法の笑顔。どんな
につらいことも、悲しいことも、その笑顔があればきっと乗り越え
られる・・と。


 大きな悲しみの予感を密やかに感じながら、それでも笑顔を
浮かべて生きていくことを覚悟したであろう夏美。カツノに
もらったあらゆるものが、きっと背中を押し、守ってくれること
を信じているからこそ・・。そうしていくことが、きっと何より
カツノが自分に望むことだと分かっているからこそ・・・。


 まともや、「環さん・・」と小さくつぶやき、その場を彼女に
任せるカツノ。そして、環さんとふたりきりにしてくれ・・という
カツノ。大女将と、女将の会話。玉手箱の意味・・・。
 時を超えて分かり合う女達。女将の伝統と共に受け継がれる
女将が抱え持たなければいけない悲しみ・・。


 ナツツバキ。暑いさかりに涼しげに揺れる花。釈尊ゆかりの樹
でもある沙羅双樹・・。
 どんなにひとに囲まれようと、どんなに深く慕われ愛されようと
高みを目指すひとは、高みに立つ人は、いつも孤独なのかもしれない。