撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

こころを開いて(どんど晴れ)

 遠野で父親と再会した柾樹。捨てられたと思っていた柾樹が
父もまた息子のことをずっと思い続け、苦しい気持ちを持ち続けて
いたことを知り、自分の淋しさを親の愛情で充たす。


 逃げ出した自分がこんなことを言えないのは分かっているが・・
という父の話を聞きながら、柾樹の中で何かが変わっていく。


 素直になって心を開けば、すべてのものは語りかけてくれる・・


 遠野に夏美が来て、電話があり、柾樹が夏美を迎えに来て・・
何気ない偶然、とてつもない幸運のように見えたこの一連の出来事
の影に、そんな風に流れるように、心を配ってくれていた環たちの
存在があったことに気付く。
 柾樹・・お前が相手にするのは人間だ。ましてや、家族なんだ
と、語りかける父。あの家の中で、ひとり違う空気を吸って生きて
いるような心もちでいた柾樹が、自分もまたあの家族達に気遣いを
受け守られていたことに気付く。


 政良から加賀美屋に電話が入り、環たちが喜んで話している。
それを見る大女将カツノ。あのカツノですら、自分の事となると
手が出せないことになることもあるのだ。そして、それを取りもって
くれたのが、嫁の立場である環である・・というこの不思議さ。


 家族のなかでも、いろいろな立場があり、それぞれの役どころや
得意分野、得手不得手、相性、そんなものがあるのだろう。上下関係
などとは関わりのない、人とのつながりを滑らかにする自分なりの
立場があるのだ。親子の血のつながりのない環だからこそ出来たの
かもしれない。


 そして、どうしても上手くいかなかった・・と自分は逃げ出したんだ
という政良だからこそ、柾樹がいまどんな気持ちでどんな悩みを持って
いるか理解できたのかもしれない。政良は、逃げたのかもしれないが
そのあとに、時間をかけて、自分とも、家族のこととも、加賀美屋の
こととも、繰り返し考えることによって向き合ってきたのだろう。


 自分にはないつよさがある、そして夏美さんがいる・・と息子に
いう父。押しつけるのではなく、息子がやろうとしていることを
おまえなら出来る・・と信じることが、いまの父親としての息子への
愛情なのかもしれない。


 愛されている・・という安心を得た柾樹は、心を開くことが出来る。
そして、開かれた心には、自然とあたらしい風が・・あたたかい温もりが
流れ込んでくるのだと思う。