撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ひとつの夏

 ずっと応援してきた中学生クラブチームの九州大会が終わった。


 Bチームで活動していたうちの長男は、このひとつ下の学年の
子とのつきあいが多く、今でもメールのやりとりをしている子が
いたり、親の方も、小学生の頃からずっとお世話になってきた
コーチやお母さんたちが多い。そしてそれだけでなく、なんとも
ラグビーを楽しんでいるやんちゃな魅力的な年下の男の子たちに
ひかれて、我が子がいなくなったあともずっと応援してきたの
だった。


 めきめきと力をつけ、負ける気がしなかった彼らの最後の試合は
予定よりも一日早く、涙とともに終わってしまった。


 最高のやつらの最高の試合だった。しかしながら、頂点を極める
には、それだけではまだ足りないのかもしれない。「いつもどおり
がんばれ〜!」と、どこかいつもと違う彼らに声をかけながら、
あとになってきづいた。いつもどおりでは手に入らないものもある
のだ。彼らは、いつもどおり、彼ららしいプレイをしていて、普通と
違ったのは相手チームの方だったのかも知れない。


 試合が終わって、彼らの最後の姿をしっかりと目に焼き付けたあと
ふと、セミの鳴き声が響き渡っていることに気付いた。今までどう
だったかしら?自分がその音にすら気付かないほどに試合に熱中して
いたことに気付いて、いつも通りじゃなかったのはいったい誰よ!
と思うと笑えてきてしまった。


 見上げると青い空。「青く染まれ!」と願った想いは届かなかった
けれど、彼らは決して燃え尽きて消えていったりしない。空のように
海のように、彼ららしさを変幻自在に変えながら、またどこかで私を
魅了してくれることだろう。


 ひとつの夏が終わった。しかし、夏空はいっそうその輝きを増して
あたらしい期待を抱かせてくれる。