撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

信じていく(どんど晴れ)

 夏美と柾樹のシーンから始まる。ガイド誌をあいだに、この
あいだの客とのことや、加賀美屋のおもてなしについて話す
ふたり。


 柾樹の言葉を思い出す夏美。これからはずっとそばにいる、
二度と淋しい想いはさせない・・と。柾樹を見つめる夏美。
そばにいる・・ということはこういうことなんだ。何かあった
時に、そばにいる、言葉を交わす、心を落ち着け、自分を取り
戻す、ふたりで守るべきものを持ち、ふたりで信じ合い歩んで
いく・・・。これからもずっと柾樹さんを信じていくから・・
と柾樹を見上げる夏美。


 ふたりの時間を紡ぐ・・というのはこういうことか!と思った。
美しい糸を紡ぎ、そのいとをひたすら織り上げていくように・・、
澄んだ色の絵の具を画布の上に重ねていくように・・。
 その曇りのない心を薄く、しかし、限りなく積み重ねていくこと
により、いつの間にか輝くばかりの織物や、内側から光を放つかの
ような絵画が出来上がっていくのだろう。


 雑誌を見て娘のことかと勘違いして喜ぶ母親を見て、本当の
ことを言えずに力無く微笑む彩華があまりにも哀れだった。肩の
力を抜いて振り向けば、彼女のことを心配してくれているひとは
いるというのに・・・。立ち止まることもできず、前をひたすら
睨み付けて進んでいこうとする彼女を優しく抱きとめてやれる
存在はいったい誰なのだろうか・・・。