撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

耐えられなかったんだよ!(さくら)

 桂木先生にも弱いところはある・・。あたりまえのことなんだ
けれど、悲しい、大きな声を出して、部屋を飛び出していく桂木
先生にとてもびっくりした。


 「過去に負けている」というさくら。真樹子が向き合おうと
しているのに桂木先生は逃げている、卑怯だ・・と。おまえに
何がわかるんだ!と飛び出す桂木先生。耐えられなかったと。


 男の弱さと女の弱さは違う。男の強さと女の強さも違う。相手への
思いやりも、男と女ではかたちが違う。本当はどちらか一方が
強かったり弱かったりするものでもないし、どちらか一方だけが
相手を守り続けるだけのものでもないのに・・・。


 さくらのいっていることは間違いではない、分かってるよという
桂木先生。そして、彼女と話す決心をする。


 耐えられなかったんだ・・という桂木先生の言葉がストレートに
心に突き刺さった。分かっていてもどうしようもなかった、11年前の
自分。一度越えられなかった壁を前に、もう一度ぶつかっていくことが
出来なかった自分。


 時間というものは必要な時があるのだろう。高校生の時、壊れそうな
自分を必死で支えることが精一杯だった桂木先生も、今はもっとつよい
こころでいられるようになっている。桂木先生が何も出来なくなりそう
だった時に、声を掛けたおとうさんも、そっとしていたまわりの人たち
も、何も言わずに見守ってきたおかあさんも、そして、何も知らずに
ただやってきたかのようにみえるさくらも・・一生懸命生きているから、
ただ、幸せを願っているから、こんなふうにきれいなかたちでチャンスが
巡り巡ってきたのではないかな?


 ふたりが離れていた時間も決して無駄ではなかったと思う。ただ・・
真樹子が幸せになるまでは自分も幸せになれない・・と祈り続けた桂木
先生・・。真樹子さんを自分が幸せにするから・・とは思えなかったのが
これだけ時間と、心の強さが要った理由なのかもしれないね・・。